エリート外科医の一途な求愛
「しかも君の場合は完全に順番が逆だもんなあ……ハヅキの親からしたら、ほとんど誘拐犯並みだ」


多分、俺の溜め息の理由を半分くらいは完全に見透かしているんだろう。
レイはなんとも愉快気に、結構意地悪なことを言ってくる。


「でもまあ、それはハヅキの方からもちゃんと話はしたんだろ? 親から見たら君は不届き者だけど、自ら投降してついてきたのはハヅキなんだから」

「まあ……ね。けどさ、レイ。昨夜葉月が、寝ぼけて聞き捨てならないことを言ったんだけど」

「ピロートークって言えよ。なんだ。今日のそのやつれようはそのせいか?」

「……茶化すなよ。そうじゃなくて、結構本気でマズいんだぞ」


ギロッと睨み付ける俺に、レイの方もようやく少し真剣な表情を浮かべた。


「もしかしてハヤト、インターポールに追われそうなのか?」


結構真顔で恐ろしいことを言う。
それに俺は目を伏せ、首を横に振った。


「その方が逃げようがある分、いくらかマシ。……あのな。葉月の母親の方は驚いてるけど、祝福してくれてるみたいなんだ」

「問題はオヤジさんか」


これぞ、阿吽の呼吸。
俺は溜め息混じりに頷いてみせる。
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