エリート外科医の一途な求愛
「ほら、葉月って、文句の付けようのない美人だろ? しかも一人っ子で、そりゃあ男親からしたら目に入れても痛くないくらい、可愛いんだよ」

「さりげなく惚気るなよ……」


呆れたように椅子にふんぞり返るレイを無視して、俺はガシガシと頭を掻いた。


「『付き合ってたわけじゃないけど、アメリカで同棲します』って報告したら、絶句したまま電話ぶち切られたらしいんだよな……」


はああっと腹の底から大きく息を吐く俺に、レイはブッと吹き出して笑った。


「ハヅキもなかなか直球の報告するな……」

「根が真面目でバカ正直なんだよ。で、少なくとも、彼女の親父さんにとって、俺の印象は最悪に近いと言って過言ではない」


そう言いながら俺も足を組み上げた。
椅子の背もたれが、ギシッと軋んだ音を立てた。


「でも、一度も会わずにハヅキを奪ったままには出来ないだろ。なるべく早く一時帰国して、挨拶して来るべきだ」


アメリカ人のレイが、日本の常識に沿ったことを俺に説いてくる。
それが面白くない気分で憮然としながら、俺は何度も頷いた。
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