エリート外科医の一途な求愛

「くっくっくっ……。ハヤト、普段は人間の心臓切り刻んで、繋ぎ合わすなんてことしてるスプラッターな男なのに、ハヅキのスパルタ親父は怖いのか？」

「次元が違うだろ。……ったく、他人事だと思って……」


ふて腐れて愚痴ってから、俺はもう一度大きな息を吐いた。
レイはまだ肩を揺らして笑っている。


「まあ、やるしかないだろ、殺されても。好きな女手に入れた代償だと思うしかない」

「……まあな」


レイの最後の言葉には少し間を置いた後頷いて、俺は椅子に反り返るように低い天井を見上げた。


「まあ、ガンバレ。聳える山は高ければ高いほど、手に入れる空は美しい」


レイは笑いながらサラッと軽くそう言って、今度こそ手術報告書の作成に戻っていった。


俺はレイがなんの気もなく付け加えたその一言に、グッと言葉に詰まっていた。


「……だな」


唇の先で、ボソッと独り言を呟く。


それとよく似た言葉を告げて、俺は彼女をここまで連れてきた。
葉月のスパルタ親父に殴られて瀕死の状態にされたとしても、彼女を本当の意味で手に入れることが出来るなら、それは、よじ登ってでもてっぺんを目指すべき山ってことだ。


「……やるしかねえ」


半分以上自分を鼓舞する為に口に出して呟き、俺は自分のパソコンの電源を入れた。