エリート外科医の一途な求愛
「この雨じゃ、正門に行くまででもそうとう難儀だろうからな。ちょっと早いが、行くとしよう」
「はい。行ってらっしゃいませ」
デスクを回り込んで、私の横を通りドアに向かう教授の背中を追う。
私の後ろから、木山先生も着いて出てきた。
医局内で各務先生を取り囲んでいた研修医たちが教授に気づき、『あ』と言うように姿勢を正すのがわかる。
「教授、もうお出かけですか」
研修医を軽くどかすようにして、人垣の中から各務先生が一歩前に踏み出してきた。
教授も足を止めて、各務先生に笑顔を向ける。
「一週間不在になるが、後をよろしく」
「ワシントン医科大学のスミス教授のバイパス術と、最新心肺循環装置の視察でしたよね。土産話、楽しみにしてます」
各務先生と教授の会話を聞いて、各務先生に群がっていた研修医たちが表情を引き締めるのがわかる。
「もちろん。君に話さずに誰に話すんだ。……ああ、どうでもいいが、風邪引くなよ」
教授がわずかに眉をひそめて付け加えるのを聞いて、各務先生も苦笑を浮かべた。
「このくらいなら、大丈夫ですよ」
そう言う各務先生の髪は、まるでシャワー後の洗い晒しのように乱れていた。
「はい。行ってらっしゃいませ」
デスクを回り込んで、私の横を通りドアに向かう教授の背中を追う。
私の後ろから、木山先生も着いて出てきた。
医局内で各務先生を取り囲んでいた研修医たちが教授に気づき、『あ』と言うように姿勢を正すのがわかる。
「教授、もうお出かけですか」
研修医を軽くどかすようにして、人垣の中から各務先生が一歩前に踏み出してきた。
教授も足を止めて、各務先生に笑顔を向ける。
「一週間不在になるが、後をよろしく」
「ワシントン医科大学のスミス教授のバイパス術と、最新心肺循環装置の視察でしたよね。土産話、楽しみにしてます」
各務先生と教授の会話を聞いて、各務先生に群がっていた研修医たちが表情を引き締めるのがわかる。
「もちろん。君に話さずに誰に話すんだ。……ああ、どうでもいいが、風邪引くなよ」
教授がわずかに眉をひそめて付け加えるのを聞いて、各務先生も苦笑を浮かべた。
「このくらいなら、大丈夫ですよ」
そう言う各務先生の髪は、まるでシャワー後の洗い晒しのように乱れていた。