エリート外科医の一途な求愛
そんな私に、各務先生は目を細めてニヤリと笑う。


「大事な女に不安な想いなんかさせないって言ったこと」


初めて聞いた時、確かにドキッとした言葉。
それを真っすぐ見つめられながら再び耳にして、今もまたあの時と同じように鼓動のリズムを狂わせてしまう。
お椀を持った手がビクンと震えるのをしっかり正面から見られ、私は頬をカッと赤らめた。


視界の端っこで、高瀬さんが一歩踏み込んでくるのがわかる。
こういう話題になって、大喜びしてるんだろう。


「ガッカリって、そういうことだろ。『各務先生カッコいい!』ってちょっとドキドキしちゃったのに、『やっぱり女に囲まれてるよ、あ~あ』って」


わざと芝居がかった口調で言いながらテーブル越しにグッと身を乗り出し、各務先生は私を探るように覗き込んでくる。


ドンピシャで言い当てられ、私の頬が更に火照った。
各務先生はテーブルに箸を置き、腕組みしながら肩を揺すって笑った。


こうなったら、言い返さないと。
彼の思う壺のような気がする。


「わ、私じゃなくても女性ならそう思うと思います」


各務先生のペースに巻き込まれないように、必死に取り繕いながら言い返した。


「いくらカッコいいこと言ったって、口だけじゃ薄っぺらで……」

「口だけじゃないよ」


言ってるうちに冷静さを取り戻してきた私を、各務先生はあっさりと遮った。
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