エリート外科医の一途な求愛
脳裏をよぎるのは、三年前に別れた最低の元カレの顔。
風の噂で、あれから半年して後輩の女の子と結婚したことを聞いた。


彼女が妊娠してるって言ってたし、きっと今頃は一児のパパ。
未練があるわけじゃないけど、わざわざ幸せを願うでもない。


別に今更どうでもいい男。
本当は思い出したくもない。
だけど付き合いも長かったし、あまりに最低だったから、逆に今でもはっきりその顔を思い出せる。


あの人も、オフィスで見掛ける度に、いつも違う女の人と一緒にいた。
バレンタインとか誕生日とか、同じ部の女の子からプレゼントもらったりもしてたっけ。
オフィスだし仕事仲間の範囲だと思っていたけど、その中の何人かと実際に関係があったことを後で知った。


各務先生が医局やナースステーションで女性に囲まれる姿を見ると、嫌でも元カレの姿と重なる。


オフィスだ、ただの仕事仲間だ、と自分に言い聞かせながら、モヤモヤするのに気にしないようにしていた自分がバカみたいで。
長いこと騙されて裏切られていたのに、気づけなかった自分が情けなくて惨めで。


最低な男に、盲目になっていた自分への屈辱。
そんなものばかりが胸の中に渦巻く。
あの人が私に植え付けたトラウマは、そういう物だ。
< 80 / 239 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop