エリート外科医の一途な求愛
私にとって、各務先生はあの人と同類の男。
だけど、各務先生が私の心の傷を抉って二度向けた言葉に、好奇心をくすぐられた。


彼がどんなにたくさんの女の人と一緒にいる姿を見ても、不安も感じず余裕でいられるほどの愛され方。
大事な人だけに向ける彼の愛情って、どれだけ大きくて深いんだろう――。


ついそんな興味を抱く自分に、私はハッと我に返った。
慌てて身体を起こし、一瞬心に浮かんだ妄想を払拭するかのように、勢いよく首を横に振る。


だからと言って、各務先生に言われるがまま、自分の身を以て試すなんておかしいじゃない。
そう、所詮『試し』なんだから。
彼の口車に乗せられて興味本位で覗いてみたが最後、結局元カレの時以上に、イケメンに幻滅することになるのが目に見えている。


もうあの時のように傷つきたくない。
浮気されたくないなら、浮気の心配のない人を選ぶべき。
だから、みんなが好きになるようなイケメンの人気者じゃダメ。
私だけを想ってくれてることが、わかりやすい人がいい。


自分の身を自分で守る為には、極端でも歪んでても、このくらいの感覚でいないと次の恋なんか出来ない。


――各務先生じゃ、絶対にダメ。


私は自分にそう言い聞かせながら、両腕で頭を抱えた。
再び前屈みになり、強く強く目を閉じた。
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