エリート外科医の一途な求愛
身体が痛いと思ったのが先か。
寝返りを打とうとして妙な重みを感じたのが先か。
それとも、眩しいと感じたのが先だったか。


私は眉間に皺を寄せながら、重い目蓋を持ち上げて、薄く目を開いた。


朝からジットリと湿気を孕んだ重い空気が気持ち悪い。
額にうっすら滲む汗を拭おうと無意識に右手を上げて、私は胸の上の重みの正体に気づいた。


「っ……!?」


ギョッとした途端、息をのんだ。
大きく目を見開き、勢いよく身体を起こそうとして。


「ひゃっ……!!」


身体の横に突いた手が、ズッと滑る。
私は横たわっていたそのソファから、床に転げ落ちていた。


ドスンと尻餅をついて、反射的に顔を歪める。
それほど高さはないと言っても、勢いよくぶつけたお尻が地味に痛い。
けれど、そんなのそっちのけで、私はソファの上を凝視した。


「かっ……各務先生っ……!?」


そんな上擦った声が漏れて、慌てて口を両手で覆った。
ソファに寝そべるその姿をしっかりこの目で確認した途端、ドックンと心臓が跳ね上がるような音を立てる。


「なっ、なん……」


何? どうして?
いったい何がどうなってこんな状況に!?
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