エリート外科医の一途な求愛
私はたった今ソファから落ちたばかり。
ソファの上のぽっかり空いた狭い隙間には、ついさっきまで私がいたはず。
胸の上にあった重みは、間違いなく各務先生の腕だ。
つまり、あの狭いソファで、私は彼の腕の中で眠っていたということ。


状況の把握はできても、どうしてそんなことになったのかわからない。
腰を抜かしたようにお尻をついたまま、ソファの上ですやすやと眠っている各務先生を、信じられない思いで見上げた。


洗い晒しのような髪が乱れて目元にかかっている。
ギュッと閉じた切れ長の目。
目元に影を落としているのを見ると、割と睫毛が長いのがわかる。


薄く開いた唇のせいで、その寝顔はあどけない。
けれど、寝息で軽く上下する胸元は裸だ。
おかげで、普段以上の色気が漂っている。


「わ、わわわ……」


頭の中は大混乱状態なのに、心臓だけがドッドッとすごい音を立てて騒いでいる。
足で床を蹴って逃げるように後退すると、背中が何かにぶつかった。
それがローテーブルだと気づいて初めて、私は、ここがどこなのかと疑問に思った。


お尻をぺったり床についた格好のまま、大きく辺りを見回してみる。
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