エリート外科医の一途な求愛
ちょっと汚れた古いパネル貼りの天井。
無機質な蛍光灯は、今は点いていない。
さっき眩しいと感じたのは、大きな窓が開いていて、カーテンがずれて光が射し込んでいたせいか。


視線を向けた先にある何台かのデスクは、どれも分厚い本が積み上げられている。
どこか雑然としているけれど、今は他には誰もいなくて静かだ。


雰囲気だけなら医局に似ているけど、もちろんここは私の職場じゃない。
もしかして、病院内のドクター控室とか何か?


思考がそこに辿り着いて、ようやく私にも今の状況の経緯が想像できた。
昨夜私、各務先生を追って病院に駆け付けた後、救命救急センターの待合で眠ってしまったんだ。
それで、オペを終えて出てきた各務先生が私を見つけて、ここに運んでくれたんじゃ……。


自分で理解した瞬間、頬が火照って熱くなった。
あの待合に放置されなかったのはありがたいにしても、上半身裸の各務先生に、ほとんど抱えられるような状態で、一晩寄り添って眠っていたという事実を受け止めきれない。
頭の中真っ白になりながら、私は勢いよくその場に立ち上がった。


昨夜会食の為に着て行った水色のワンピースはしわしわで見るも無残だけど、そんなの気にしていられない。
とにかく一刻も早くここから逃げないと。
各務先生が起きてしまう前に……!
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