エリート外科医の一途な求愛
ドッドッドッ……と、すごい勢いで加速する鼓動。
口から飛び出してくるんじゃないかと思うほど、心臓が跳ね上がってるのがわかる。
だって、偶然とは言え。
不可抗力だったとは言え――。
「今、君……」
「ち、違います! 今のは転んでぶつかっただけで、き、キスしたんじゃないですからっ!!」
各務先生が私に何を言おうとしてるのか察して、私は先手を打って捲し立てた。
困惑する彼から目を背け、勢いよく立ち上がるとクルッと背を向ける。
「あ、おい! 仁科さん……!」
逃げるようにドアに向かう私を追って、各務先生もソファから立ち上がるのがわかった。
顔は真っ赤。
胸はバクバクいってるし、呼吸も苦しい。
それでも追い付かれたらどうしていいかわからない。
とにかく今は、各務先生の顔を見る余裕なんかない……!
「仁科っ……」
各務先生の声を背に感じながら、その部屋から廊下に飛び出した途端、逆に入って来ようとした人影にぶつかりそうになってしまった。
『おっと』という声と、避けるように身を翻す気配を感じる。
「す、すみません!!」
足を止めて謝る余裕はない。
ほとんど反射的にそう言っただけで、一度も振り返ることができないまま、私は長い廊下を転がるように走り抜けた。
口から飛び出してくるんじゃないかと思うほど、心臓が跳ね上がってるのがわかる。
だって、偶然とは言え。
不可抗力だったとは言え――。
「今、君……」
「ち、違います! 今のは転んでぶつかっただけで、き、キスしたんじゃないですからっ!!」
各務先生が私に何を言おうとしてるのか察して、私は先手を打って捲し立てた。
困惑する彼から目を背け、勢いよく立ち上がるとクルッと背を向ける。
「あ、おい! 仁科さん……!」
逃げるようにドアに向かう私を追って、各務先生もソファから立ち上がるのがわかった。
顔は真っ赤。
胸はバクバクいってるし、呼吸も苦しい。
それでも追い付かれたらどうしていいかわからない。
とにかく今は、各務先生の顔を見る余裕なんかない……!
「仁科っ……」
各務先生の声を背に感じながら、その部屋から廊下に飛び出した途端、逆に入って来ようとした人影にぶつかりそうになってしまった。
『おっと』という声と、避けるように身を翻す気配を感じる。
「す、すみません!!」
足を止めて謝る余裕はない。
ほとんど反射的にそう言っただけで、一度も振り返ることができないまま、私は長い廊下を転がるように走り抜けた。