エリート外科医の一途な求愛
「そんな警戒するなよ。言っとくが、俺は奪われた方だぞ。してきたのは君だ。仁科さん」


いきなりのからかい口調に、頬がカッと熱くなるのがわかる。


「だ、だから昨日のは変な意味なんかなくて!」


ムキになって言い返すと、各務先生はポケットから片手を出して、ヒラヒラ翳しながら私の反論を制した。


「ああ、わかったわかった。そういうことにしておくよ」


軽くあしらうような言い方に、私はムッとして思わず唇を尖らせた。


「せ、先生こそ。わ、私に変なことしてないでしょうね」


腕組みしながらジットリと睨むと、各務先生はフッと眉を寄せた。


「変なこととは?」

「しらばっくれないでください。先生、裸だったじゃないですか! そ、それに、なんでわざわざあんな狭いソファで一緒に……!」


言わされてるのをわかっていて、顔が赤くなっていくのがわかる。
そんな私に、各務先生はヒョイッと肩を竦めた。


「オペが終わってシャワー浴びた後、暑かったから。で、仮眠室が満員だったからああするしかなかったの。君を床に転がしとくわけにもいかないだろ。俺も床はごめんだしね」


なんでもないことのようにシレッとそう言って、彼は私に小首を傾げてみせた。


「それとも何? なんかした方が良かった?」


意地悪にニヤリと笑われて、私は彼をキッと睨み付けた。
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