暗黒王子と危ない夜
あたしのタイプとか絶対興味ないだろうけど。
こうやってさりげなく話題を振ってくれるおかげでいつのまにか緊張も解けていた。
「タイプってほどでもないかなあ。もっと男らしい人が好き……かも」
誰かをかっこいいと思うことはあっても、"好き"になったことがないあたしは、自分の好みも曖昧だった。
「男らしい人ー? もっとワイルドで色黒でサングラスでめっちゃ筋肉ついてるみたいなの? じゃあ、俺じゃだめだね」
軽く笑って、あたしから離れる。
「会計してくる」
「あ、うん」
まだ支払いは済ませていなかったみたいだ。中島くんの手には惣菜パンとペットボトルのコーラ。
レジの近くまで付いていくと、列に並んだ中島くんは精算機奥のガラスケースをぼんやりと眺め。