暗黒王子と危ない夜
特に恥ずかしそうな素振りも見せず、あっさりとそれを認めた。
あたしだったら好きな人の話を振られたとたん、もっとあたふたしてしまうに違いない。
「まあ、煙草やめたところで振り向いてくれるような子じゃないけどね」
小さくそうこぼすと中島くんはそのまま空いたレジに進み、会話が終わる。
もっと詳しく聞いてみたいけれど、口下手なあたし。コンビニを出たあとに再びこの話題を持ちだすのにも勇気がいる。
親しいわけでもない男の人のプライベートに突っ込んでいいのかな……とか、いちいち悩んでしまうからいけないんだと思う。
お会計をしている中島くんを数秒見つめたあと、あたしは何も買わないからコンビニの外で待っておこうと思い、その場を離れた。
─────そして
扉を開けようと手を伸ばした瞬間。
道路の向こう側に見えた人影に、思わず足が止まる。
心臓が、ドクリと重たい音を立てた。