【BL】夕焼け色と君。
それからまた、日椎の家の場所とか、たわいない会話をして、ふざけて、笑って。
少し遠いと聞いていた道のりも、あっという間だった。
絶好スポットだという丘の上。
日椎は腕時計に目を落とし時間を確認。
「日が沈むにはもう少しだな。」
「なぁ、こういう所ってどうやって調べてくんの?」
「…………人に聞いたり、あとは、まぁ………本読んで調べたり。」
「……わざわざ?」
「………悪い?」
素っ気ない返しに、俺は首を横に振った。
「全然、悪く、ない。」
と言うか嬉しい。
嬉しくて、ドキドキする………。
これってやっぱりさ…………
「………好き」
ってことに、なるんだろうか………。
「……ぇ」
日椎の目が驚いた色を見せて俺を捕らえて、俺は思わず口を手で覆った。
やば……、今無意識のうちに声に出してた。
「えっと、夕日!夕日好きだから、すごく嬉しい!」
「ああ、知ってるよ。」
ああ、ほらまたそうやって……
優しく笑うから、狡いんだ………。
「ほんと、ずるい………」
「何が?」
「何でもない……」
「?……そろそろ日没だ。」
日椎の言葉で視線を前に向ける。
徐々に日が落ちていく。
ゆっくり、ゆっくり、オレンジ色に染まっていく。
やっぱり、綺麗だ……。心が落ち着く。
それから日が完全に沈むまで、俺達は無言だった。
オレンジ色に黒が差してきて、俺は日椎に向き直る。
「なぁ、今日も綺麗ーー」
言いかけた言葉を止めたのは、あまりにも優しい表情が既にこちらに向けられていたからだ。
え………もしかして、ずっと見られてた………?
「やっぱり、いいね。」
日椎は言った。
「夕日、見てるときの山碼って何かいいんだよね。」
「なんだよ、それ。」
真っ直ぐ向けられる目に気恥ずかしくなり、目を逸らす。
「アンタのその表情(カオ)、見たくなる。他人にこんなこと思ったの初めてだ。」
せっかく落ち着いた心臓がまた鳴り出す。
身体が恥ずかしさで熱くなっていく。
なんなんだよ、ほんとに。
「なんだよ、それじゃあまるで……」
そんなこと言われたら………
「俺のこと、好きみたいだろ……」
ーー勘違いしそうになる。
「…………ぇ」
日椎は瞠目して、固まった。
ああ、まずい。
何言ってんだ、俺。
今のは自分の願望押し付けただけだ。
「あ、いや、その違っ……日椎、あの」
「………………悪い、今日は帰る。」
「へ?あ、うん……俺も……」
「ごめん、今日は一人で帰りたい。」
下を向いている日椎の表情が読めない。
けど、きっと怒ってる。
俺が変なこと言ったから…。
「日椎、あの!本当にごめーー」
「じゃあ、また。」
俺の言葉なんで耳に入っていないようで、足早に日椎は歩いていってしまう。
お、追いかけないと。謝らないと。
気に触ることを言ったんだ。
だから、引き留めて謝らないと。
頭では分かっているのに体は全く動かなかった。
何であんな事言っちゃったんだろう……。
そんな後悔だけが胸に残った。