【BL】夕焼け色と君。
俺は言葉の意味を理解するのに数秒掛かった。
色………?
「すみません、言っている意味が分かりません。」
「楓はね、目に障害があるの。幼い頃は今より色が判別出来ていたんだけれど、徐々に悪くなっていて。今は全てが白黒にしか見えていないのよ。」
白と黒………。
ああ、何だろう。
凄く嫌なのに、思い当たる節がある……。
白と黒しかない私服とか、好きな色を聞いたときの反応とか……。
「でも、いずれはそれもなくなる。」
「なくなる?」
「白が消え、黒になる。目が見えなくなってしまうの。」
ああ、それから………
文字のない、真っ白な本とか………。
あれって見えないけれど、きっと字が書いてあったんだ。
点字って言う文字が。
「いきなり言われても納得できないわよね。でもあなたには知っていて欲しかったの。」
納得なんて出来るはずないのに、どこか心は冷静で。
「間違いなく楓にとって、あなたは大切な存在だから。あの子、最近あなたの話しかしないのよ。それも見たことない表情でね。」
ふふっと美凪さんは笑った。
「勝手に色々喋っちゃったから、あとで楓に怒られちゃうわね。」
どうして教えてくれなかったんだろうとか、
何で気付かなかったんだろうとか、
思うところは一杯あるけれど………
一番嫌なのは、受け入れがたいことを、妙にすんなりと受け入れてしまっている自分がいることだ。
「楓のことを、お願いね。」
「…………はい。」
握り締めた本が、何倍にも重く感じた。
ああ、本当に嫌になる。
脳裏に思い浮かぶのは、優しく笑う日椎の表情。
ーーすき、スキ、好き。
認めるよ、間違いなく、これは恋だ。