特進科女子と普通科男子
教室中の視線を感じ、誤魔化すように小さく深呼吸した。
( これが、最後…… )
そう思って見上げると、背を向けていたはずの彼が低いフェンスに頬杖をついて、こちらを見ていた。
「わっ、」
ぱっ、と口を覆う。
思わず声が漏れたが、誰も気付かなかったようだ。
どきどき。胸がきゅっと締め付けられる感覚。
時が止まったかのように、彼から目が離せない。
危ないよ、とか。先生に見つかっちゃうよ、とか。
思う事は、いっぱいあったけれど。
ーー"大丈夫。"
小さく手を振って屋上を出ていく彼から、私は目を逸らすことが出来なかった。
( 今、私に手を振ったの……? )
悪戯に笑う彼の声が、何度も何度も頭の中に蘇って。
ーー私の胸を、どきどきと高鳴らせた。