特進科女子と普通科男子

教室中の視線を感じ、誤魔化すように小さく深呼吸した。

( これが、最後…… )

そう思って見上げると、背を向けていたはずの彼が低いフェンスに頬杖をついて、こちらを見ていた。

「わっ、」

ぱっ、と口を覆う。

思わず声が漏れたが、誰も気付かなかったようだ。

どきどき。胸がきゅっと締め付けられる感覚。

時が止まったかのように、彼から目が離せない。

危ないよ、とか。先生に見つかっちゃうよ、とか。

思う事は、いっぱいあったけれど。

ーー"大丈夫。"

小さく手を振って屋上を出ていく彼から、私は目を逸らすことが出来なかった。

( 今、私に手を振ったの……? )

悪戯に笑う彼の声が、何度も何度も頭の中に蘇って。

ーー私の胸を、どきどきと高鳴らせた。

< 10 / 62 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop