特進科女子と普通科男子
「やっぱり二人だと大変だね」
「まぁ、普通科は面倒くさがって来てくれないからね。体育だって真面目にしないし」
私は、彼女の言葉に「そうだね」と共感しなくなった。
本当に大変だけど、あの朝から特別になったこの時間。
「ーー」
「ーー」
遠くから男の子達の声がして、私はどきどきしながら呟いた。
「……相良君」
その呟きは、彼女にはしっかりと聞こえたようで、やはり呆れたように首を振った。
それを追いかけるように、彼女の髪がさらさらと宙を舞う。
「由李も好きだねぇ。確かに格好良いけど、普通科だよ?」
「……相良君は、優しいもん」
唯一、彼への気持ちを打ち明けた彼女に向き合うように立って、こそこそと相良君を見つめる。
毎回、私に盾として使われる彼女は、普通科の彼の事をやっぱり良くは思わないみたいで。
だけど、彼女は決して「やめなよ」とは言わなくて、むしろこうやって協力すらしてくれる。
「話しかけないの?」
「え、な、何て話し掛ければいいかな?」
「わ、分かんないよ。普通科の人っていつも何話すの?」
「それこそ分かんないよー」
そんな事を言ってるうちに、相良君は友達とグラウンドの方へ行ってしまう。
結局いつも話し掛けられないまま。
私達は顔を見合わせて、二人して溜息を吐いた。