特進科女子と普通科男子

「特進科は勉強しかしないからぁ、もう体力無くなってあんな所に座り込んでる」

「男子達の事を見つめてるー!特進科って男子少ないから飢えてるんじゃない?」

「きゃはは、言えてるー!」

「あんたみたいな特進科の地味子が、相良に相手にされるわけないけどねぇ」

聞かれてたんだと気付くと、かぁっと顔が熱くなる。

きゃはは、と馬鹿にしたような笑い声は続いている。

何も言い返せなくて俯くと、私を庇うように彼女が立ち上がった。

「何よ、貴方達」

「やだ怖ーい。ガリ勉が怒ったぁ」

女の子達は意に介さないように笑って、「怖い怖いー」を繰り返す。

そんな女の子を捉えた彼女の瞳に、だんだん冷たさが滲みだす。

「はっ、何勘違いしてるの?性格ブスに何言われても、怒るわけないでしょ」

堂々と腕を組んで、彼女は敢えて相手を苛立たせるような言い方をする。

これは、結構怒っているときだ。そして……手が出る一歩手前である。

「はぁ?ガリ勉が調子乗んな!」

「ふふ、貴方の事を言ったわけじゃないのにそんなに怒るなんて。もしかして心当たりでもあるの?」

ーー次だ。

彼女の腕にぎゅっと力が入るのが分かった。

焦った私は女の子達に向かって、必死の思いで「今すぐ止めろ」と念を込めて見つめた。

それが睨んでいるように見えたのか、女の子達の怒りにさらに火をつけてしまったらしい。

「生意気なんだよ!」

「ーーあぁ駄目っ、宮ちゃん!」

私の手をするりと解いて、女の子達に殴り掛かろうとする彼女は、人が変わったように歪に笑っていた。

咄嗟に、彼女達の間に割り込むように身体を滑り込ませる。

そして、訪れるであろう痛みを予感して、強く強く目を瞑った。
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