特進科女子と普通科男子

何だかんだ俺の話に付き合ってくれる美鈴には、歳上の彼女がいる。

七歳差をものともしない美鈴の大人っぽさは、社会人の彼女と並んでも違和感は無くて。

ただ、今まで。

美鈴はどの彼女に対しても、束縛を一切しない。

自分から連絡したり、何かをあげたり。

嫉妬することもない美鈴に、むしろ自分から束縛されようと浮気を繰り返す彼女達。

それでも、美鈴は何も言わない。

「美鈴は、彼女に言わないの。浮気すんなって」

「めんどくせぇ」

その一言で終わらせてしまう美鈴に、彼女達は口を揃えて「冷たい男」と毒を吐かれている。

美鈴は来るもの拒まず、去るもの追わず。

本気になった女の子なんて、いるのだろうか?

「別れてって言われちゃうんじゃない?」

冗談のつもりだった。

けれど美鈴は、表情を一切変えないまま、「もう別れた」と告げた。

「……えー、まじですか」

「あいつ、子供が出来たんだって」

「……は!?」

咄嗟に叫んでしまって、口元を押さえて教室を見回す。

けれど、教室はそれを上回る程のバカ騒ぎで、誰もこっちに目を向ける奴はいなかった。

一先ず安心。

深呼吸して、無理矢理気分を落ち着かせてみる。

……あ、駄目だ、落ち着かない。

「……学校、どうすんの」

「俺の子じゃねぇよ。相手の男と結婚するから別れよう、ってさ」

美鈴は、優しい。

彼女に無理矢理お揃いにされた指輪は、今は無い。

今までの彼女達皆に、ちゃんと誠意をもって付き合っていた。

それに気付かず、ただ甘えてただけの彼女達が、美鈴のことを冷たいだなんて、よく言えるものだ。

「……」

美鈴だって、全く傷付かないわけないのに。

でも結局。

俺は何も言えないまま、そっと窓の外に目を逸らした。
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