特進科女子と普通科男子
「悪かったな、こんな話。気にするな」
「何でも話せよ。それで楽になるなら」
前髪を掻き上げて、にっと笑った美鈴の姿はいつもと変わらない。
なら、俺も普通に過ごしていようと決めて、いつも通り、チャイムが鳴るとすぐ美鈴を追い立てて教室を出た。
着替えを手早く済ませ、テニスコートの前を通ると、既に彼女はいつも一緒にいる友達と楽しそうに笑ってて。
その笑顔が、こっちを向かないかなと期待してテニスコートを通り過ぎる。
そんな都合良く、彼女が俺に気付くはずないか。彼女からすれば、あの日の朝会っただけなのだから。
「目、合った?」
「……合わなかった」
「ふっ、だせぇ」
「うっせー」
特進科の女の子を普通科の男が見つめ続けるわけにもいかず。
渋々諦めて、テニスコートを後にした。