特進科女子と普通科男子
睨み合う彼女達にゆっくりと近付いて、様子を窺う。
少し遠目のこの場所でも、話し声がよく聞こえる。特に田村の声が煩い。
「はっ、何勘違いしてるの?性格ブスに何言われても怒るわけないでしょ」
臆することなく堂々とそう言い返したのは、あの子といつも一緒にいる友達だ。
気の強そうな印象はあったけれど、中々言うじゃないですか。
わざわざ来なくても良かったかも、と苦笑する。
「はぁ?ガリ勉が調子乗んな!」
「ふふ、貴方の事を言ったわけじゃないのにそんなに怒るなんて。もしかして心当たりでもあるの?」
敢えて煽るような言い方に、田村達の顔が引き攣る。
……あの友達、態と煽ってないか?
案の定、田村達は火がついたようで、今にも殴り掛かりそうな状況だ。
「生意気なんだよ!」
「駄目っ、宮ちゃん!」
あの子が、彼女達の間に割り込むように身体を滑り込ませる姿が、スローモーションのようにゆっくりに見えた。
ーー危ない。
そう思った瞬間、俺の体は動き出していた。