特進科女子と普通科男子
保健室に着くと、既に彼女はベッドに寝かせられていて表情も落ち着いていた。
それに安心して、漸く震えが収まり出す。
「……落ち着いた?」
相良君の優しい声に、こくんと頷く。
彼女を運んでくれた男の子は、気を遣ってくれたらしい。
私から距離を置くように窓辺の椅子で脚を組んで座った。
「……驚いて、ごめんなさい」
その男の子を見て頭を下げると、男の子は僅かに慌てた。
「いや、俺も悪かった」
「美鈴は目つき悪いだけだからねー」
( ……美鈴君っていうのか )
二人はそう言ってくれて、未だに目を覚まさない彼女の事を一緒に待っていてくれた。
相良君は、保健室の先生の私物と思われる牛乳を冷蔵庫から勝手に取り出す。
そして、慣れたようにホットミルクを作った。
「はい、どうぞー」
「あ、ありがとう」
私に渡したあと、嫌がる美鈴君にも強引にホットミルクを渡して、にこにこ笑う相良君。
渋々、美鈴君もホットミルクを受け取って、鼻をつまんでから一気に飲み干していた。
( あ、ちゃんと飲むんだ……牛乳苦手なのかな )
「ふふっ」
声に出して笑うと、二人が驚いたような顔をする。
二人の視線を一身に受けて、私は身を竦めた。
「あ、えっと美鈴君、ちゃんと飲むんだって思ったです……」
緊張して変な敬語になったのが恥ずかしい。
二人の視線から逃れるように、ベッドへと歩み寄った。