特進科女子と普通科男子
7
ーー放課後。
「宮ちゃん……あの、本当に?」
「何言ってるの。由李が"お礼言いたい"って言ったんだよ?」
「言ったけどー!」
現在、普通科校舎の昇降口前……
ではなく、特進科の昇降口。
足を踏ん張って、普通科校舎に連れていこうとする宮ちゃんに「無理無理」と抵抗する。
それは、教室に戻った後。
"「二人にお礼が言いたい」"
そう言うと、彼女は何を思ったのか。SHRが終わると直ぐ、私の机に駆け寄った。
「ほら、早く帰る支度して!」
「う、うん!どうしたの宮ちゃん、今日何かあるの?」
「い、い、か、ら!」
そう急かされて、教室を飛び出すように出てきた。
そして、冒頭に戻る。
「明日になって、勇気出なくなったら困るのは由李だよ」
「そうだけど……」
「……あのね、由李。相良君は普通科だけど、特進科の女子にも人気あるの。知ってた?」
「も、って事は……普通科の女の子にも?」
「当たり前だよー」
やっぱり……相良君優しいし、素敵だもんね。
納得しつつ、凄く寂しい気持ちになる。
( 普通科の女の子なら、相良君のこと、もっと近くで見られるんだ。あの笑顔も…… )
「で、でも……」
「私がいるでしょう?」
( 宮ちゃん…… )
普通科の人苦手なのに。それでも、私の為に一緒について来てくれる気なんだ。
私は顔を上げて抵抗をやめると、強気な笑顔でにっこりと微笑む彼女の手を、そっと握った。
「宮ちゃん、ありがとう。大好き」
「……っ、もう由李!他の人の前で、そんな可愛い顔したら駄目だからね!」
「えぇ、してないよ」
「してるのー!」