特進科女子と普通科男子
じろじろと視線を浴びながら、私達は二人を待った。
未だに、二人が姿を見せる気配は無さそう……
「あー、特進科の由李ちゃんじゃーん?」
真っ黒な制服に反するような、カラフルな髪の男の子達に声を掛けられる。
男の子って認識するや否や、ぞわっと悪寒がして身体が震え出す。
宮ちゃんは、いつものように私を背に庇うように前に立った。
「人違いです」
堂々と言い切る宮ちゃんに苦笑しそうになるが、実際は怖くてそれどころじゃない。
「あはは。面白いねー。君の事じゃないけどー」
「誰待ってるのー?もしかして、俺?」
「それはねぇよ!」
「てか俺、君の方が好み。名前はー?」
強気な態度で睨む宮ちゃんをものともせず、男の子達はにやにやと笑う。
「あんた達に用はない」
宮ちゃんが凄んでも、彼らはへらへら笑うだけで、動く様子は無い。
それどころか、徐々に距離を詰められている気がする。
「み、宮ちゃん……」
近付いて来る男の子達が怖くて、彼女の腕にぎゅっとしがみつく。
じりじりと追い詰められ、門に背中がぶつかって、かしゃん、と音を立てた。
その音にすらびくっと肩を揺らしてしまい、情けなくなる。
言うことを聞かず震え続ける自分自身に、唇を強く噛み締めた。
その状況に宮ちゃんも焦り始めて、「一旦引き返そう」と震える私の腕を引いた。
ーー引こうとした。
「せっかく来たんだからー、あーそーぼ♪」
いつの間にか、周りを囲まれてしまっていた。
逃げ場が無くて、二人、身を固くするしかない。
男の子達は依然怪しく笑っている。そして、一人の男の子が宮ちゃんの腕を掴んだ。
「ちょっと……離して!」
「いいじゃん、ちょっとだけ」
周囲に人は大勢いるのに、皆面白そうに眺めるだけ。
……誰も助けてはくれない。