特進科女子と普通科男子
私は、宮ちゃんと出会う前のことを思い出した。
誰も味方なんていないんだ。
そう思ってた。
宮ちゃんだけが助けてくれた。
でも、彼女は今ーー
「じゃあ、俺は由李ちゃんとー!」
後ろから男の子の手が、きつく私の腕を掴んだ。
ぞっと全身に寒気がして、がたがたと身体が震え出す。息も、しにくい。
「やっ、やだ……」
唇が震えて、声が掠れる。
「やだ、だってー。可ー愛い」
ぶんぶんと腕を上下に振って抵抗するのに、男の子の力は全然緩まない。
むしろ抵抗する度に強さを増してる気がする。
「ほ、本当に、やだぁ……!」
「汚い手で、その子に触らないでよ!」
私同様、男の子に腕を拘束されていながら、彼女が必死に叫ぶ。
男の子の指を外そうとするのに、外したところから、また掴まれていたちごっこだ。
男の子はくすくすと笑うだけ。
頑張っても意味なくて、堪えきれなかった涙が、遂に流れ落ちた。
怖くて怖くて、前が見えないくらい涙が溢れ出す。
「泣いてるのー?かーわい♪」
助けて。
助けて、誰か。
( ーー相良君……!)