特進科女子と普通科男子

「……えっと、由李ちゃんが、宮日ちゃんを止める方法がないって言ってたんだ」

「あぁ、一回手を出すと止まらないね。でも、私が意識失えばいいだけだから」

「……何か、雰囲気違うね?」

困惑したように微笑み相良君に「当たり前でしょ?」と首を傾げる。

「由李の前じゃないし」

「……さいですか」

「ふふっ。ま、今はもう何も関わりないからさ。由李のこと心配しなくていいよー」

よく眠っている由李。

いつもびくびくしているくせに、肝心なところで自己犠牲したりするから。危なっかしくて見ていられない。

勉強も運動も出来るのに、対人関係はほぼ最悪。

その可愛さゆえに女子には妬まれて、男子には
迷惑極まりない愚行の標的にされ。

「宮ちゃん」と、私だけを頼りにしてくれていたのに。

「……私、相良君のこと嫌い」

「どうしよう、美鈴。嫌われてしまった」

「知らん」

困ったように眉を下げる。

失礼なことを言ったのに、怒るわけでもなく、問い詰めるわけでもなく、受け入れる。

( ……この人、優しいだけじゃないんだ )

それはきっと、相手に無関心だから出来ること。

期待していないから、怒る必要も傷付く必要もないってことか。

私よりも、美鈴よりも。

多分、この人は冷たい人……

「……相良君、由李のどこが好きなの?」

「え、何で知ってるの」

ばれてないと思っていたのか、素直に驚く相良君に少し親近感を抱いてしまう。

( 気付いてないの、由李くらいだと思うけれど )

「どこ?」

「んー、理由はないかな」

人って……嫌いと言われた相手に、これほど柔らかく笑えるものだろうか。

ベッドの向かい側に座る相良君は、目元だけを僅かに細める。

「好きになる理由なんて、後付けに過ぎない。俺は、由李ちゃんが好き。それだけだよ」

「……そっか」

相良君の瞳に、嘘は無くて。

冷たいのかもしれない。優しいのかもしれない。

私には、彼がどんな人かまだ分からないけど。

彼の言葉に納得させられたら、認めるしかないんだ。

( ……好き )

ただ、それだけのことなんだ。
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