特進科女子と普通科男子
一日はあっという間に終わって、放課後。
( ……結局、お礼言えなかったな )
帰ろうと鞄を手に持った私を、宮ちゃんが「ちょっとゆっくり喋ろ?」と引き止めた。
窓際の前後に座って、少しだけ窓を開ける。
「今日、ずっと屋上見てたでしょ。といっても、由李午後からだから、三限分だけどねー」
「……そんなことないよ」
宮ちゃんにはばれていたらしい。
意味無いと分かっているけれど、一応否定しておく。
……授業中によそ見なんて、したことなかったのにな。
ちょっとだけ、普通科の人達が楽しそうな理由が分かった気がする。
「あ、そういえば宮ちゃん。美鈴君とは知り合いなの?」
「ごふっ」
「わぁ!?大丈夫?」
宮ちゃんが、大好きな烏龍茶で喉を詰まらせた。
違う器官に入り込んだみたいで、大きく噎せて苦しそうに咳をしている。
「ごめんね、突然話しかけたから」
「いや、むしろ話題の方がびっくりしたよ」
どんどん、と胸を叩いて、うっすらと涙目になっている彼女の背を優しく叩く。
そろそろ治まったかな?
「で、どうなの?」
「……まぁ、その……幼馴染みっていうか」
「幼馴染み!?」
「ちょっと声大きいよ!……幼馴染みって言っても、腐れ縁みたいなもんだよ」
そう言う宮ちゃんに、私の予想は確信に近づいた。
浮かない表情をする彼女の表情に、聞いても良いか、迷う。
彼の話しになった途端、彼女の瞳に悲しみが滲んだからだ。