特進科女子と普通科男子
何気なく旧校舎ーー普通科の校舎に目を向けた。
廊下で野球ごっこをしている普通科の男の子達。
ーーパリーン!
「こらー!誰だ窓割ったのはー!」
こうして、先生が犯人を追い掛けて走り回っていることも多い。
「馬鹿なの」
向かいに座る彼女の呟きが、私の内心と重なった。
( ……どうして怒られるって分かってて、するんだろう )
私も例に漏れず、普通科が苦手だ。
ーーなのに。
「ぎゃはは」
「やっべえ、走れー!」
( ……窓を割った犯人だろうか )
怒られているくせに、楽しそうに廊下を走る彼らが、何故かとても輝いて見えた。
「きっと、その人もあいつらと一緒だよ。普通科だし」
彼女の声には、彼らに対する皮肉も怒りもなくて、ただ「それが事実だ」と諭すような響きがあった。
( 確かに、そうかもしれないけど…… )
「……でもね、平気だったんだ」
「え?」
「平気だったの。彼に、触れられても」
向かいの校舎から、目を離せない。
無意識に彼を探していたが、姿が見えなくて落胆の溜息を零してしまう。
彼女は、そんな私に何か言おうと口を開いたけれど。
「ねぇ、宮ちゃん。これって運命かな」
そう言って笑った私に、呆れたように首を振って、「仕方ないな」と微笑んだ。