特進科女子と普通科男子

少し悲しそうな、少し期待するような君の表情に、胸が高鳴る。

ーーああ、好きだ。

その笑顔も、泣き顔も、声も、仕草も、全部。

だけどそれは、後付けに過ぎなくて。

( ……ただ、好きで仕方ない )

溢れそうな想いを、必死に押しとどめる。

彼女の手を掴みたい。他の誰よりも近くにいたい。

「……誰だと思う?」

「え……?」

まだ。

まだ、耐えて。

「誰だと思う?」

少しずつ、戸惑う彼女へと近付いて。

ゆっくり、ゆっくりと、彼女に手を伸ばす。

ーーあと少しで、届きそうなんだ。

彼女の震える唇に引き寄せられるように、顔を寄せる。

どちらかが動けば、唇が触れる……そんな距離。

彼女の瞳が驚きで揺れたのを見届けて、くすっと笑みが漏れる。


「ぁ……相良くっ、」



ーーあと、1cm。






「ーーはい、ストーップ!!」
< 56 / 62 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop