特進科女子と普通科男子
相良君の柔らかそうな茶色の髪。
穏やかな茶色の瞳。
すっと鼻梁の通った鼻筋。
宮ちゃんにほっぺたを解放されて、項垂れたまま美鈴君にうざがられている相良君をじーっと盗み見る。
( ……やっぱり、凄く格好いい )
すると、突然相良君がこちらを向いて目が合う。
にこっと優しい微笑みに、ぼうっと見蕩れてしまう。
ぱくぱくと、彼の形の良い唇が「好き」と動いて、今度こそ、ぺたんと足が崩れた。
「え、由李!?」
びっくりしたように宮ちゃんがしゃがみ込んで、私と目を合わせる。
覗き込んだ彼女の瞳には、きっと真っ赤な顔をした私が移っているんだろう。
「……ふぅーん」
私の思考を見透かしたように、怪しく微笑んだ宮ちゃん。
誤解だよ、と訳もわからず言い訳しようと口を開いた。
けど、それより先に、「宮」と呼ぶ声がして、宮ちゃんが顔を後ろに向けた。
それが、美鈴君の声だと気付くと、さっきまでのとは少し違うどきどきがした。
( 美鈴君、「宮」って呼んでるんだ! )
美鈴君が、あんな優しい表情をする人なんだと初めて知った。
とても嬉しい発見だ。
ーーそして、宮ちゃんも。
「帰ろうか」
「っ……うん」
その顔は、恋をする女の子だ。
いつも可愛い宮ちゃんが、もっともっと可愛く見える。
宮ちゃんはきごちなさそうに美鈴君の方へと歩いていく。
その後ろ姿をどきどきしながら見守る。