◆あなたに一粒チョコレート◆
「瑛太ー?来たよ」

「あー、開いてる」

ドア越しに瑛太の返事が返ってきて、私はなんの気なくそれを開けた。

「っ!」

当たり前だけど、瑛太がいた。

でも、だけど。

着替え中だったんだ、瑛太が。

ジーパンの上が……上半身が、裸だった。

「なに」

硬直した私を瑛太が訝しげに見つめた。

シャツを手に持ったまま、私を真正面から見つめる瑛太。

背が高いのは知ってるけど……こんなだっけ?瑛太って。

男らしい首から肩にかけてのラインや、分厚い胸、引き締まった腰。

「なんだよ」

その時、フワリと柑橘系の香りが鼻をかすめた。

……あれ?

瞬間的に朝、瑛太から漂ってきたバニラの匂いを思い出した。
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