◆あなたに一粒チョコレート◆
そう。そんな話、一度もしたことがない。

家が隣同士でお互いの部屋に行き来する間柄だけど。

いや、ちょっと待って……高校に入学した頃を境に、瑛太から私の部屋に来た事なんてあっただろうか。

いや、ない。いつも私が瑛太の部屋に押し掛けて一緒にオヤツやハンバーガー食べたり、ゲームしたり……。

でも瑛太は……私の部屋にはめっきり来なくなった……。

そう思い返した時、なんだか胸の中に冷たい風が吹き抜けていく感覚がして、私は反射的に学食内を見回した。

瑛太は……来てないのかな。

瑛太は目立つからいたらすぐに分かる。

背が高くてスタイルがいいから。

「あ、あそこにいるじゃん」

菜穂が向けたフォークの先端を追うと、その先に瑛太がいた。

窓の隣の壁に身を預けるようにして男友達数人に囲まれた瑛太は、ストローをさしたパックジュースを飲みながら、フンフンと頷いている。

「ほら、見てよ。群を抜いてイケメン」

「……」

本当だ……こうして見ると、思っていたよりも瑛太はカッコいい。
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