◆あなたに一粒チョコレート◆
ううん、水着じゃない。多分……下着だ。

それに、透けそうな程薄い服を着た変なポーズの女の人。

全身が濡れているのか、身体にピタリと服が張り付いていて、半開きの赤い唇から舌を覗かせた妖艶な目付きの女の人。

どれも見る人をドキッとさせる。

パラパラとページが流れるようにめくれて、見えたのはほんの一瞬だったけど、それらが強烈に私の眼に焼き付いた。

息を飲む私の前で、決まり悪そうに瑛太が私から眼をそらした。

「……」

瑛太はなにも言わない。

「信じられない」

気付くと私は非難めいた口調でそう呟いていた。

目の前の瑛太の大きな身体や、筋肉の張った太い腕。

それとさっきの雑誌。

いつの間にか瑛太が知らない人になっているみたいで、ここにいたくなかった。

「……帰る」

やっとそこで瑛太が口を開いた。

「待てよ、春」

「やだ、触らないで」

「春……」

グッと眉を寄せた瑛太がこっちに手を伸ばそうとしたから、私は夢中で部屋から飛び出して階段を駆け降りた。

瑛太があんな雑誌を持ってるなんて……信じられない。

自分の部屋に駆け上がった私は、ドアを背にして大きく息をつき、ズルズルとしゃがみこんだ。

何故か分からないけど心臓が煩く鳴り響き、自分ではどうしようもなかった。
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