◆あなたに一粒チョコレート◆
***

その日の夜、珍しく瑛太が私の部屋にやって来た。

……気まずい。

「なに」

ベッドの上で縫いぐるみを抱えた私を見下ろすと、瑛太がノートを破ったメモ書きを差し出した。

「これ福井先生から。大まかなマネージャーの仕事の箇条書き。それと、三木が春のラインのID教えてほしいってさ」

「……分かった」

「……」

メモを受けとりながら少しだけ瑛太の顔を見ると、瑛太はスッと視線をそらして横を向いた。

たちまち、胸がグッと重苦しくなる。

……なんで私がこんな思いしなきゃなんないわけ?

私、なんも悪くないよね?!

なんで私が瑛太に眼をそらされなきゃなんないのよ。

しかも、またしてもバニラの香りがするしな!

「瑛太、シャワー浴びてないの?」

「……まだ。今帰ったとこだし」

「ふーん」
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