◆あなたに一粒チョコレート◆
その時、

「春?」

うわっ!

「瑛太!まだ朝練?!」

瑛太……浅田瑛太は私のお隣さんで幼馴染で、おまけに同じクラスだ。

ゆっくりと立ち上がった瑛太が、バックネット越しに私を見下ろして静かに続けた。

「道具片付け終わったとこ。今から急いで教室いく」

「そっか。私達も急ぐわ。じゃね!」

「おお」

「菜穂、行こ!」

「うん」

私たちは教室を目指し、バタバタと走った。

***

「あー、何とか間に合ったね」

1年D組である私と菜穂は本校舎だ。

それに瑛太も。

辛うじて一足先に教室に滑り込んだ私と菜穂をみて、社会の田中先生が苦笑する。

「川瀬春と安藤菜穂!もっと早く来いよ~」

私はテヘヘと笑い、田中先生を見た。

「ごめん、先生。次は頑張る」
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