◆あなたに一粒チョコレート◆
「私マネージャーの仕事を押しつけられる前にサッカー部の練習試合見に行く約束してたんで、ちょっと抜けるけど」

「あー?お前、押しつけられるとは何事だよっ。お前が塀をよじ登ったのが悪いんだろーが!
……まあいいか。ちょっとだけだぞ。すぐ戻れよ」

「はーい!」

これでよし。

それから出席簿をベンチの横に置いていた手提げカバンにしまおうとすると、そこに誰かが立ちはだかった。

見上げると、瑛太だった。

またしても不満げに瞳を光らせて、瑛太は私を見下ろしている。

「邪魔」

「行くの」

「瑛太に関係ないでしょ」

ツンと横を向くと、私は手提げを諦めて踵を返した。

とにかくもう私は、瑛太の事で谷口さんに変な敵対心を持たれたくなかった。
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