◆あなたに一粒チョコレート◆
しかも別の誰かの足が、私の足に絡まっている。

……痛い、さすがに。

「ヤバい、君、血が出てる」

私の足に絡まるように倒れていた部員が息を飲んだ。

「え?」

近くにいた部員が次々に駆け寄ってきて、私達を取り囲む。

嘘……血が、血が流れてる。

「スパイクで足を……誰か、保健室に連れていけ!このままじゃダメだ」

顧問の先生が辺りを見回し、キャプテンと鮎川君が私の側にしゃがみこんだ。

「鮎川はダメだ。試合がもう始まる」

「先輩、でも……」

私は慌てて首を横に振った。

「あの、私大丈夫です。鮎川君、気にしないで」

「でも、川瀬」

「もうすぐ試合でしょ?大丈夫だから気にしないで」

少し笑って立ち上がろうとすると、私に突っ込んできた部員が申し訳なさそうに頭を下げた。

「ごめん、ほんとに。凄く夢中になってて、君がいるのに全く気付かなくて……」

私はサッカー部のマネージャーに手渡されたティッシュペーパーを受け取りながら彼を見上げた。
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