◆あなたに一粒チョコレート◆
バレンタイン……。

「そ、そうなんだ」

菜穂の彼氏のヨシ君は近くの男子校の一年先輩で、何度か会ったことがあるけどかなりお洒落でカッコいい人だ。

女子力の高い菜穂と彼氏は凄くお似合いだし、私と違って菜穂は器用だ。

「今年はヨシと過ごす初めてのバレンタインデーなんだ。で、チョコ手作りするからさ、春も一緒に作ろ?」

「えっ!」

思わずギクリとする私に、菜穂はあからさまに嫌な顔をした。

「あのさ、春。そろそろ好きな人とか作りなよ。バレンタインデーまであと一ヶ月しかないよ?ほら、前にヨシの友達紹介したじゃん?あの人なんてどうよ?春のこと気に入ってるっぽかったし」

「あー、あの冬休みに一緒にカラオケした?」

「そ。三浦君。どうよ?」

どうもこうも、どんな顔だったか思い出せない。

「うーん」

「じゃあ、先週告白してきたA組の鮎川君は?」

鮎川君は……爽やかイケメンで、なんかこっちが気後れするわ。

「うーん。断っちゃったから今さら……ねぇ」

その時、

「おーい、浅田ー。野球部の先輩が呼んでるぞー。自主練の新メニューがどーとか」
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