◆あなたに一粒チョコレート◆
……絶対怒られる。

だって瑛太は、こういうの嫌うもの。

私は自分が悪いのを分かっていたから、コクンと頷いた。

「……うん」

今度こそ立ち上がろうとした私に、鮎川君が手を伸ばす。

その時、瑛太の冷たくて低い声が響いた。

「触るな」

鮎川君がピタリと伸ばした手を止めたけど、瑛太は彼を一瞥しただけですぐ私の脇にしゃがんだ。

当たり前のように、瑛太が私の身体に両腕を回す。

「春。俺の首に腕回して」

たちまち瑛太の身体に私が密接する。

温かくてガッシリとした、瑛太の身体。

ふと周りを見ると物凄く見られてる。特に女子達に。

「……あ、の……」

「いいから早く」

「うん……」

凄く不思議だった。

恥ずかしくて決まり悪いのに……瑛太で安心する。

来てくれたのが瑛太で、凄く安心する。

皆が注目する中、瑛太は私を抱き上げ、黙って本校舎を目指した。
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