◆あなたに一粒チョコレート◆
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手当てを終えて野球部のグラウンドに帰ると、もう試合は始まっていた。

「川瀬さん、大丈夫?!」

三木さんがスコアをつける手を止めて私を見上げた。

「うん、もう平気。保険医の先生曰くスパイクで蹴られたから少し腫れるって言ってたけど、傷もそんなに深くないって」

私と三木さんの話を聞きつけた浪川が、ホッとしたように、バックネット裏に引っ込んだ瑛太に視線を流した。

「三木が先生に話してる途中で浅田が駆け出していっちゃってさあ、アイツ今日は四番打つはずだったのに、球拾いだよ」

「マジ?!」

……なんか……悪いことしちゃった。

私がショボンとしていると、福井先生が私の頭をガシッと掴んだ。

「俺の指示を聞かずにダッシュして消えたアイツが悪い!それからお前も悪い!塀なんぞよじ登ったのが運のツキなんだよっ」

「もー、先生、またそこに話が戻っちゃうわけ!?」

「とにかく、大したことないんだから働け!」

「わかりましたー」

私は三木さんにお礼をいうと、部員に配るスポーツ飲料の用意を始めた。
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