◆あなたに一粒チョコレート◆
***
「春、なにそれ。しかもどうしたの」
ママがレジ袋と泣き腫らした私の顔を交互に見ながら驚いたように言った。
「ママ、キッチン借りるね!それともしも瑛太が来ても追い帰して」
「えっ」
「悪いけどママもあっち行ってて」
「え」
「ごめんね」
ママはしばらく私の顔を見ていたけど、やがて察したようにフワリと笑った。
「ママ、今日はパパとデートするわ。久々に街で待ち合わせしようかな。ああ、あんた夕飯は適当に食べといて。はい、これ」
……ママ……。
ありがと、ママ。
「うん、パパと楽しんできて」
私はママに泣き笑いの顔で頷くと、手渡されたエプロンを握りしめた。
***
今になってつくづく、三木さんの気持ちがよく分かった。
『本番に備えてチョコレート作り練習しときたくて……』
確か彼女はこう言っていた。私、不器用だからって。
ああ!きっと私は三木さん以上に不器用だ。
「春、なにそれ。しかもどうしたの」
ママがレジ袋と泣き腫らした私の顔を交互に見ながら驚いたように言った。
「ママ、キッチン借りるね!それともしも瑛太が来ても追い帰して」
「えっ」
「悪いけどママもあっち行ってて」
「え」
「ごめんね」
ママはしばらく私の顔を見ていたけど、やがて察したようにフワリと笑った。
「ママ、今日はパパとデートするわ。久々に街で待ち合わせしようかな。ああ、あんた夕飯は適当に食べといて。はい、これ」
……ママ……。
ありがと、ママ。
「うん、パパと楽しんできて」
私はママに泣き笑いの顔で頷くと、手渡されたエプロンを握りしめた。
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今になってつくづく、三木さんの気持ちがよく分かった。
『本番に備えてチョコレート作り練習しときたくて……』
確か彼女はこう言っていた。私、不器用だからって。
ああ!きっと私は三木さん以上に不器用だ。