スターチス


やるだけやって放置かい!って思ってると紙袋を持って出てきた。
次はなんなの?とユーイチを目で追いかける。

隣に座り、さっきと同じようにあたしと向い合せに座ると無言で紙袋を渡される。

「なに?」
「俺からのクリスマスプレゼント」

開けてみ?と促されて恐る恐る開けてみる。

無地の紙袋だから何が入ってるのかわからないけど、重さ的には小物っぽい。
ここでお菓子とか出てきたら面白いけど…と思いながら開けると小さな袋に小さな箱。

両方を一つずつ両手に持ってユーイチに見せると「両方サチのだよ」と言われてどっちから開けようか悩んだ。

「この中身はなんなの?」
「それ聞くか?普通」

それもそうだな、とちょっと振ってみる。
音はしない。
どちらから開けるか悩んだけど箱の方から開けることにした。

そっち開ける?と言うユーイチに一度手を止めたけど、笑われて面白がられてるのがわかったから遠慮せず開けることにした。

「え、……待って、待って」

出てきたのは二つ並んだ指輪。
てっきりピアスかと思ってたらまさかのペアリングだった。
しかもデザインがシンプルで可愛い。

「買ってきたけど、これを…って付けるのか」

何を言いたいのかわからないけど、ユーイチが話し出すのと同時にケースから外し自分の手に付けた。

少し太めのユーイチが好きそうなデザイン。

「だってペアでしょ?あたしとユーイチの、でしょ?」

ケースからもう一つの指輪を出して、ユーイチの右手をとりそうになってから左手をちゃんととって薬指にはめた。

「今、間違えたでしょ」
「間違えてないし」
「右手にしようとしたし」
「わざとだし」

ははっとユーイチが笑って、同じ指輪が付いたあたしの左手を握った。
あたしは自分の左手を見てからユーイチの左手を見る。

今までペアリングなんて何度も付けたことがあるのに、今回はなんだか恥ずかしい。
ユーイチとお揃いのモノを持つことなんてないと思ってたからそう思うのかもしれないけど、恋人からもらうお揃いの指輪は嬉しい。
それがユーイチと同じなんて嬉しすぎる。

やっとあたしはユーイチの彼女なんだって思えた。
言葉数も少なくて、仕事ばっかりで夜しか一緒に入れないし、たまにしか甘えてくれないからユーイチが本当にあたしが好きで一緒にいるのか、それもたまーに不安になったりすることだってある。

それがこうして身につけているモノで証明してくれているような気がして嬉しいし安心する。

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