スターチス
「機嫌直った?」
「別に機嫌悪くないよ」
ユーイチがあたしの機嫌を伺うなんて珍しい。
いつも自分ばっかりなのに、これはイブだからっていうのも考えてるのかもしれない。
そういえば、あたしからユーイチにプレゼントを渡してないことに気付いて「ちょっと待ってて」と部屋に戻り、ユーイチと同じく紙袋を渡した。
「ユーイチ欲しいって言ってたよね?」
ユーイチみたいに無地じゃなくてお店のロゴが大きく入った紙袋だからもう中身は想像出来ると思う。
ユーイチがいつも二つ折りの財布を持っていて、破れてきたから新しいのが欲しいってずっと言ってた。
でも気に入ってるのか、なかなか変えようとしないから考えたけど、このさい買っちゃえ!と買ってしまった。
「今の気に入ってるだろうから手放す覚悟が出来たら使って」
箱から出したユーイチは開いて中を確認したり色々チェックする。
表面を触ってみたり査定されてるみたいで変な感じだったけど、今の財布を持ってきてあたしの前で全部入れ替えてくれた。
「すぐ使ってくれるの?」
「その為に買ってくれたんでしょ?ありがとう」
その言葉だけで大満足なあたしのさっきの気分は一掃した。
自分がプレゼントしたものを喜んでくれるのは嬉しい。
嬉しくてユーイチを見ているとユーイチがくれた紙袋を指差して「もう一個の袋も開けてよ」と言われた。
「忘れてた」
「邪魔が入ったから」
あたしの隣でユーイチはあたしの行動をずっと見てる。
いつものことなんだけど、こういう時は緊張する。
もうひとつの袋は袋っていうより封筒で、もしかして手紙?!とか思ってみたけど、ユーイチが手紙書くようなことがあればそれこそ天と地がひっくり返っちゃうようなものだからあり得ないと思いつつも袋から取り出したモノは本当にびっくりするものだった。
「……航空券?」
「うん」
「しかも、……海外?」
「そう」
「………」
「なんで黙るの」
行きたいって言ってたじゃん、とチケットを取られてユーイチはそれを眺める。
「もう日にち決めてるし会社も許可取った。一週間だからゆっくりできるよ」
「そんなに休み取れたの?」
「休日出勤のおかげかな」
はい、とチケットを渡されてもう一度眺める。
本当に海外への航空券。
それもあたしがずっと行きたいって言ってた場所。
こんなに与えられていいのかなって思うくらい貰ってしまった。
「あたし、財布しかないよ」
「十分だよ」
「でも、」
「普段家事もしてくれてるし休みも出掛けれず遊んであげられないし、いいんだよ」
「ありがと、ユーイチ大好きー」
ユーイチを力いっぱい抱きしめる。
横からだし膝をたててるユーイチにうまく抱きつけないけど、そんなの全然関係ない。
モノを与え与えられることだけがクリスマスではないけど、こんな風にプレゼントをもらえるならそれ以上の価値はある。
一緒にいて、プレゼントを交換して、気持ちを伝え、触れあえる―――それだけで素晴らしくて嬉しい。