スターチス


触れた手から感じるぬくもり、見上げれば優しい顔、触れ合える距離、交わすキス、あたししか知らない表情。

「ソラが何言ってたか知りたい?」

ソファーで2人寄り添って座り、最近ご無沙汰だったいちゃいちゃをしながらユーイチが言った。

「知りたいけど言いたくないならいいよ」
「言いたくないわけじゃないけど、」
「けど?」
「俺はまだ先かなって思ってたから言いにくくて」
「なに?」

まだ先ってあたし達の今より先に何があるんだろうって考えた。
わからなかったけど。

「ソラは俺達が結婚したらサチはソラの義妹になるんだから結婚しろって言ったんだ」
「は?」
「な、そうなるだろ?だから言いたくなかったんだよ」

唖然となるあたしに溜息吐いて言ったことを後悔したような顔。
確かに想像もしていなかったことだし、あたし達はまだ付き合い始めて間もないし、ソラ姉がそんなことを考えているなんて考えたこともなかった。

なんと返事を返していいのかわからなかったけど、「まぁ、ソラ姉が言ってたことだし」と軽く流すような返事をした。

内心すごく焦ってるし、ドキドキだし意識しちゃうけど、でも普通に考えて今のあたし達にこういう話はまだ早い。
クリスマスだってこうして誰かと過ごしてるし休日だってまともに過ごしたことないのに。

「まぁ、まだ早いか」

ボソッと呟いたユーイチの言葉。
さっきの後悔したような顔はなくていつもの無表情だったけど、距離が近くてちゃんと聞こえた。

そう言ってくれるってことは少しはあたしとの未来を考えてくれてるって思っていいのかなって思っちゃう。
それはそれですごく嬉しいし、あたしにとってはすごく幸せなことだけど、やっぱり今のあたし達には少し早い気がする。

「ユーイチ」

無表情だけど今は考え事をしてるんだなって、あたしにはわかる顔に名前を呼んでみる。

声に反応してユーイチはあたしを見てくれる。
それだけで笑顔になれちゃうし、ユーイチだって笑顔になってくれる。

この無表情でわかりにくい愛情を感じ取れるのはあたしだけでありたい、いつだってそう思う。
そう思うから、あたしはユーイチが好きなんだっていつも再確認出来る。

無表情の下にある愛情の全てをあたしで埋め尽くして欲しい。

「ユーイチ、大好き」

言葉にするだけで嬉しくて、それだけじゃ足りないから抱きついてみる。

「ユーイチ大好き。好き、好き、好き。ちょー大好き」

なんだかユーイチへの愛が止まらなくて言葉に出してもきゅんきゅんしちゃう。

クリスマスのせい?
プレゼントのせい?
それともソラ姉の言葉のせい?
色々考えてみたけど、それよりも日々積もるユーイチへの愛情がやっぱり大きい。

いつも一緒にいられないし、こんな言葉も交わせない。
だったらクリスマスだって理由で全部吐き出しちゃえば、あたしの愛情が伝わるだろうって後付けだけど、そう思った。

ユーイチの反応なんて気にせず自分の愛情をぶつけるあたしにユーイチが頭にキスを落としてくれた。
あたしが顔をあげると口唇にキス。

「甘えてるの?言いたいだけなの?」
「言いたいだけって失礼なー。甘えてるっていうのかな?」

どうだろ?と言ってみるけど、そういうのはどうでもいい。
あたしの隣にユーイチがいるならそれだけで満たされる。


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