スターチス
「いつもそんな風にしたい?」
多分、ユーイチの些細な質問。
そう聞かれるとは思ってなかったけど、「そうでもないよ」と答えた。
「そういうタイプには見えそうで見えないから、本当はいつもこうしたいのかと思った」
くすくす笑うユーイチはあたしの額を撫でながら笑う。
「ユーイチだって、あたしのおでことほっぺいっつも触るけど、好きなの?」
あたしの些細な質問にユーイチは撫でている手を止めたけど、ペチンと額を叩いて誤魔化した。
「あー、また誤魔化す」
「またっていつ俺が何を誤魔化したんだ?」
「何をって、」
「俺の揚げ足取ろうなんざ早いって」
頬を引っ張りながら笑うユーイチを見てると好きなんだなってことがわかって笑えた。
意外と子供っぽいことをするユーイチもあたしのツボ。
普段こうしてひっついていられないから、ユーイチが嫌がるまでひっついてやろうと思って、離れずずっとくっついてた。
「そんなにひっつかれると重いんですけど」
「嬉しいくせにー」
「ちょっと体勢変えていい?」
「変えてもあたしは離れないよー」
「うん。じゃあ動くよ」
ひっついたままユーイチは体勢を変えて、あたしの肩にユーイチの左腕が乗っかって、向かい合うように抱きしめられる。
「ユーイチも、いつもこうしたかった?」
逆に聞いてみるときつく抱きしめられる。
今日で何回目?ってくらい抱きしめられる。
互いに寂しい気持ちはこういう時には隠せない。
仕事で忙しくたって傍にいたい人とは隣に座っていたいし感じていたいし、触れ合っていたい。
それも何度も感じたことだけど、ユーイチだって同じ気持ちだと感じる。
「ずっとこうしたかったよ、俺はね。サチがボケっとしてる間もね」
それがみんなでルームシェアしてた時の話だってことに気付くのに時間がかかったけど、そんなに前からあたしのことを想ってくれていたことが嬉しい。
ユーイチの体に巻き付けてた手を離して、ユーイチの両頬に触れて掴んだら下に引っ張ってキスしてやった。
ユーイチのことなんて気にしないで好きなだけ好きなようにキスしてやる。
ユーイチは何も言わずされるがまま。
一度離したら「もういい?」って体勢を変えられそうになったから「ステイ!」と言って止めた。
「ステイって、もっと止め方あるでしょ」
呆れるユーイチを放って、「あたしがゴー出すまでダメ」と言って好きにしてやる。
「別にいいけどね」とあっさり許可したユーイチ。
最初こそノリノリで遊んでたあたしも5分立たずに飽きてネタも尽きてやめた。
途中で絶対何かしてくるって思ってたのに本当に何もしてこないから諦めたっていうのもある。
「もう終わり?」
「うん、疲れた」
「こんな中途半端なところで疲れられると困るんだけど」
だって、と体勢を整えようとしても今度はユーイチの手が離れない。
ん?と首を傾げてみても何も言わないし動かない。
「サチのゴーサインってまだ出ない?」
忠実にステイを守っていたユーイチに笑うと「まだ?」って聞いてくるから笑いながら「ゴー」と言うと、あっという間にキスされて、完全にユーイチのペースに持ってかれてしまった。
「キスが長いよ…」
「サチのステイの方が長いよ」
二人で笑い合いながら、これ以上ない幸せなクリスマスの夜を過ごした。
END.