スターチス
「どう思う?!世間はこんなにクリスマスカラーで彩られてるのにあたしは放置?!」
祐介との電話の後、迷うことなく涼に電話を掛けた。
《店長ひどっ!てか、夜も空けられへんってこと?》
そう、涼のいうとおり、仕事でもいいけど夜くらい空けてくれてもいいと思う。
あたしはこんなこともあろうかと仕事の休みは取らなかった。
だから会うのは夕方からになるけど、それでも十分だと思ったのにまさかの仕事宣言。
付き合い長いし、あたしがそれほどイベントを重要視しないから仕事を入れたんだと思う。
でも、それでも今年は少し特別だと思った。
籍を入れた初めてのクリスマスだし、恋人じゃなく“夫婦”一緒に暮らせると思ってた。
籍を入れて夫婦になったけど、ナリくんの希望で一緒に仕事をするようになり、ナリくん達の人気が上がってくると仕事は増えるし、一緒に住んでいても帰りが遅いから翌朝に顔を合わすくらいで夫婦らしい会話もないし、休みの日もデスクに向かっていたり寝ていることが多くて、結婚しても何ら変わらない日々を過ごしてる。
「落ち着きたかっただけのかな…」
思わず零してしまう不安。
あたしと結婚したのは“好きだから”とかそういう理由じゃなくて、“もうそろそろ落ち着かないと”という理由で結婚したんじゃないかって最近思う。
《それは絶対違う!世津が好きやから結婚したに決まってる》
涼はそう言ってくれるけど、祐介から本当の気持ちを聞いたことがないからわからない。
結婚するってなったのも、涼とナリくんが結婚するって聞いて「俺らもするか」みたいな流れだった。
ナリくんみたいに“大切にする”や“愛してる”とか、そんな甘い言葉なんて言ってくれないから、祐介の気持ちはいつもわからないし、常に片思いみたいに感じる。
籍を入れて同じ苗字になっても付き合ってた頃と何も変わらない。
あたしの気持ちは膨らむのに気付いてもらえず、あとは萎むばかり。