陽だまりの林檎姫
いままで散々北都から出されていた文句の中に何度か出てきたことがあった。

「お前の髪色は目立つ。」

金色の髪を持つ人が少ないこの地域では確かに北都の言う通り歩いているだけで目立つのだ。

かといって耐性が無いかと言われればそうではなく、ただ珍しいだけなのだがどうも北都は気に召さなかったらしい。

なのでついに栢木は確率的に人口の多い少し暗めの茶色でウィッグを作り今日からそれを被っていた。

「ウィッグって言ってくれる?」

「ははは。それは失礼しました。よく似合ってますよ。」

「北都さんもそう言ってくれるといいんだけどね。」

北都の名前を出したことでさっきまで不安に駆られていた気持ちが穏やかになっていくのを感じて栢木は微笑む。

彼女の変化に気付いたタクミは意地悪そうな笑みを浮かべて栢木を見つめた。

「調子良いようですね。てっきり根を上げるかと思いましたけど、今ではすっかり溶け込んでいるようだ。さすがはお嬢さん。」

「…一体いつから見てたのよ。」

「まあ多少、先生に入れ込んでる感がありますけどね。」

タクミの言葉に強い反応を示した栢木は肩を大きく揺らして顔を真っ赤にする。

両手を頬にあてるとちらりとタクミを見るなり彼女に似つかわしくないか細い声で呟いた。

「…やっぱりそうなのかな。」

「お嬢さんが先生に惚れてるかどうかって話ですか?」

「きゃー!ハッキリ言わないでよ!」

真っ赤な顔でタクミの腕を掴む栢木に余裕の文字は少しも無い。

最初目を丸くしたタクミだったが次第に表情が和らぎ微笑ましそうに栢木の頭に手を置いた。

「自分が一番分かってるんじゃないですか?アンナお嬢さん。」

温かい言葉がやけにくすぐったくて栢木は視線を逸らし納得がいかない素振りをしてみせる。

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