陽だまりの林檎姫
「面白いですよね。」

「え?」

「あの受付の2人ですよ。栢木さんも体験したんでしょう?」

「…ああ。」

苦笑いしていたことに気付かれたのか、三浦はくすくすと笑いながら栢木に同意を求めてきた。

体験というのはおそらく2人の漫才に似た掛け合いの事だろう。

「ケイトさんの強さに感動しました。」

「ははは。そうですね、鈴さんも懲りないから困ったものですよね。」

確かにそうだと栢木も思わず笑ってしまう。

鈴はケイトが止めてくれると分かっていて自由にしているのだろう、甘えているのだと思えばなんと可愛いことか。

「しかし2人とも優秀ですからね。本当に関わらなければ人はどういったものか分からないです。」

「はい。そうですね。」

「それを私に教えてくれたのは栢木さんですよ?」

「え?」

思わぬ言葉に栢木は瞬きを重ね疑問符を打ち出した。

予想通りの反応だったのか三浦は嬉しそうに微笑むと言葉を続ける。

「栢木さんの態度、生き方。言葉ではない方法で私に教えてくれました。まさかあの北都さんが大寝坊を許すとは思いませんでしたからね。」

「そ!…れは。」

忘れていた頃に出されたのは栢木の恥ずかしい汚点。

寝不足のまま北都を迎えに行き、見付けたと安堵して馬車の中で居眠りしたかと思いきや翌昼まで寝倒してしまった件だ。

「お恥ずかしい限りです。」

「ははは。いいえ、楽しい出来事でした。」

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