陽だまりの林檎姫
扉を開ける時に、そう言うとミライは付いていくと笑って栢木が持つ積み重なったもののいくつかを預かる。

「栢木のお遣いも増えたね。」

「まあね。でも本社はちょっと辛いかな、私三浦さんと話すの緊張する。」

「えー?どうしてよ、最高のひと時じゃない!?」

「まるで面談受けてる気分。」

目を細めてげんなりする栢木にミライは目を丸くした。

あの三浦と共に時間を過ごせてそんな風に評価するのは栢木くらいだろう、北都に深く関わる場所な故に栢木への関心は良くも悪くも大きい筈だ。

栢木としては会う度にちゃんと仕事をしているのか探りを入れられている気分になるのだろうなとミライは腑に落ちない声を出す。

「分からなくもないけど…お姉さま方が聞いたら噛み付きそうね。」

「既に歯型だらけ。」

三浦が屋敷に来ようものなら羨ましいだの何だのと栢木に絡む始末、本社へのお遣いに行こうものならやはり羨ましいの何だのとまとわりつかれる状態だ。

もう早く三浦には身を固めて欲しいと身勝手にも栢木はそう願っていた。

「ミライ、三浦さんのところに嫁に行けば?」

「はあ!?何で爆弾抱えにいかなきゃいけないのよ!私にだって選ぶ権利はある!」

「…お姉さま方が聞いたら噛み付かれそうな発言だ。」

「お互い様でしょ。私にも理想ってものがあるのよ。」

「理想?」

珍しく優しい表情をしたミライの言葉に興味がわく。

強い関心を持ったミライの理想を深く聞き出そうと思うがそうはさせて貰えないらしい。

「ミライー!料理番が呼んでる!」

「はーい!」

北都の書斎の真ん前で階下からミライに声がかかった。

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